玲子さんには美容室で起こった事実を事細かく話した。
僕が本意でこのような姿にして欲しいと望んだわけではない、
お店のオーナーが話したことをわからずに了承してしまったのだ。
おそらく玲子さんも僕が話したことが事実に反していないことは
理解してくれたと思う。
だが玲子さんは僕がこのような姿になったことを喜んでいるようだ。
玲子さんに理解してもらえた安心感で僕は玲子さんと共に
ランチをとることにした。
僕は首から下に垂れ下がる急に長くなった髪の毛が邪魔に
なって食事がしづらかった。
その仕草が周りにはあどけない女の子に見えていることも
僕にはわからなかった。
ようやく食事を終えた僕は玲子さんと今日本来の目的の1つでも
あった男性用の服を買いに行くことになった。
『薫ちゃん、そういえば美容室で写真撮られたでしょ。』
『はい、ウィッグをとって薫の毛を整えてからと、全部終った後で
あ、途中でもアシスタントの人がデジカメで撮ってたような
気がします。』
『じゃ、薫ちゃんもちょっとしたモデルさんの仲間入りね。』
『どういうことですか、薫がモデルなんてありえないですよ。』
『お店の宣伝に使うためよ。ヘア雑誌とかお客さんを呼び込むための
宣伝用パンフレットとかにね。
あのお店は結構有名だから見る人多いと思うよ。
ネットでも見れるからね。薫ちゃん有名人になるかもね。』
『そうなんですか。でも薫の写真なんて使わないでしょ。』
『他にいい子がいたらだけど、案外薫ちゃんに勝てる子
探すのも難しいと思うよ。』
『冗談やめてくださいよ。玲子さんも行ってるんだから玲子さんが
モデルになってあげてくださいよ。』
『もちろん私は載ってるわよ。当たり前じゃない。』
もちろん、そんなことになる訳はないと確信していたが、
後日確認しておこうと思った。
女性のヘアスタイルの宣伝に
女装している僕が載るなんて
何があっても許されたことではない。
『で、薫ちゃん何でさっきから私に腕組んでんの。』
『だって恥ずかしいんですよ。』
『もう、なに甘えた子になってんの、薫ちゃん可愛すぎて周りに
注目されるから私まで恥ずかしくなるわよ。』
しかし僕は玲子さんの腕にしがみつきでもしなければ震えも
止まらずその場で倒れそうな勢いでもあった。
そんな恥ずかしさと戦いながらの道のりを耐え忍んで目的の
駅近辺にある百貨店が並ぶ界隈えと到着した。
所狭しと人の波ができていて僕もその中を歩く1人の女の子として
紛れ込めたことで幾分周りの視線が気にならずにいられたが、
この大人数の中で
女装していることがばれたらどうなることかと
心の中では強く恐れていた。
しかし僕は玲子さん目指していたお店に着くまで、初めての
女装して女の子としてウィンドウショッピングを楽しんだ。
ウィンドウには女性のお洋服のディスプレイばかりで
本当の僕にとってはどうでもよかった時間の筈なのに、
女装して髪型まで完璧に女の子に変身した僕には
玲子さんとあれこれとお洋服の評価や気に入ったお洋服を
指差しながら歩く時間がごく自然な行動となっていた。
僕はこの数ヶ月間の間に何処まで女の子として鍛えられた
のであろうか。
すでに僕は
女装している男性であることすら忘れてしまう
瞬間がある。
タグ : 女装
コメントの投稿