学校を出た僕とヒロはショッピングセンターに立ち寄った。
ファッションのフロアーには中高生の女の子ばかりで
男性の姿は見渡す限り僕一人のようだ。
当然のことだろうレディースのフロアーに立ち寄る男性など
カップルでもなければ考えられない。
僕もヒロが側にいなければ当然のように怪しまれるに違いない。
最初はヒロが一緒でもレディースのフロアーをうろつく事には
躊躇いがあった。
でも今では地味なメンズフロアーより華やかなレディースの
フロアーをうろつく方が何となく楽しい。
ヒロがいてこそできる楽しみだ。
今日も放課後の時間つぶしを済ませ僕とヒロは家に帰ってきた。
『アキ、ちょっと寄ってかない。お母さんもまだだし私の部屋で
喋ろうよ。』
『うん。』
ヒロの家は母子家庭でパートの仕事に行ってるおばさんの
帰りはもう少し遅い。
ヒロも1人でいるのは退屈なんだろう。
ヒロが飲み物の用意をしてくれる間、僕はヒロの部屋で待っていた。
ヒロの部屋も中学生の頃とは随分変わった。
特にファッションに興味を持ったヒロの洋服はクローゼットや
タンスには収まりきらず部屋のいたるところに掛けられていた。
そんな中にクリーニングから戻ってきた夏用のセーラー服も
掛けられていた。
僕は何気なくそのセーラー服を手に取り眺めていた。
そしてセーラー服を身体にあて鏡に映してみた。
『アキ何してんの。』
セーラー服を身体にあて鏡に映る僕の後ろにヒロも
映っていることにようやく気がついた。
いつから見られていたのか。
『え、いや、別に、』
僕は言葉にすることなどできなかった。
『アキ、女の子の服に興味があるの。』
『そんなわけないよ。僕男だよ。』
『だって、セーラー服持ってるし。』
『ちょっとどんなのかなって、ごめん勝手に。』
『じゃあいいけど、ケーキもあったから食べるでしょ。』
『うん。』
良かった。
僕はセーラー服を元の位置に戻してテーブルの前に座った。
何もなかったようにヒロとケーキを食べながら話した。
ヒロはいつものようにファッション雑誌を取り出し自分に
どれが似合うか僕に尋ねてくる。
そんな日々日常的になった女性のファッション雑誌を見ながらの
ヒロとの会話やヒロの買い物のつき合いで女性の洋服を手にする
ことのある僕がセーラー服を手に取ってもヒロには許される行為
なのかもしれない。
それにしても変なとこを見られてしまった。
『アキ、今日トシが言ってた事だけどアキってベランダからよく
女の子見てるでしょ。』
『え、何だよ。そんなことないよ。あそこは僕の居心地のいい
場所なんだよ。』
『隠しても無駄よ。私知ってるんだから。アキの目線いつも
女の子のほう見てるよ。』
『そんなことないって、ただぼっとしてるだけだから。
それに好きな子なんていないから。』
『私はそんなこと言ってないよ。私には隠さなくてもいいよ。
アキが見てるの女の子じゃなくてセーラー服でしょ。
アキ、セーラー服着たいんじゃない。』
『ヒロ何わけわかんないこと言ってんの。』
『だって買い物してる時もアキ楽しそうだもん、普通男の子って
嫌がるのに。』
『別にただの暇つぶしだよ。』
『そうなの、じゃあいいわ。ねぇねぇ、でもさっきさぁ、私がいなかったら
私のセーラー服着てたんじゃない。』
『ひつこいよヒロ。』
何とかしなければ、このままではヒロに押し切られそうだ。
タグ : 女装 セーラー服
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